工事中の滑走路に着陸してしまった。



もう何年も前のことですが、

私の乗っている機種で、羽田の工事中の滑走路に着陸してしまうということが
起きてしまいました。
いい加減なクルーでもなければ、タイムストレスがあったわけでもないのです。

工事中の滑走路には、5個の大きな✖️が書かれていました。
この✖︎は、40m x 40m もの大きさがあり、着陸帯標識と同じくらいで
一発で認識できます。


ところが、操縦していたクルーは、着陸後、減速して時速20km程度に
なった時、ハタと「間違った滑走に着陸した」と気づいたのです。


障害物は、取り除かれていて、着陸には支障がなかったので、
事故にはならなりませんでしたが、

マスコミは、
「あんな大きな✖️があるのに、
見えていないなんて、信じられない。
怠慢だ」
という報道をしました。


なぜ、大きな✖︎が5つも書かれていたのに
見えなかったのでしょうか?


それとも、見えていたけど、無視をしたのでしょうか?


一度や、二度ではありません


滑走路を間違いそうになったパイロットは私も含めて、
みんな経験をしています。

一瞬「誘導路を滑走路と勘違い」、
「違う滑走路に進入しそうになった」
冷や汗をかいたパイロットは何人もいます。

私の同僚や、後輩も、大きな声では言えませんが、
「ドキ」「ヒヤ」としたことはあると思います。

パイロットの不注意が原因ではありません

むしろ、パイロットは昔よりもたくさんの注意と
安全のための操作を行っています。

・決められたタイミングで決められた指示やコールアウトをする。
・操縦席の二人が合意がなければ、行動しない。
・必ず、フライトをしている人をしていない人が、モニターする。
・同じものを見ないように任務が明確に決められている。
様々なことをします。



''本当の問題は、「ルールを守ることに必死で、目の前の出来事を見失うこと」
です。''

ルー・シー・サイ・カクが事故を誘発


車の教習所に通うと、やらされることがあります。
それは、「ルームミラー」見て、「指示器」「サイドミラー」「確認」です。


この4つの動作を行うように教えられ、
言葉に出して、動作している時、ほぼ前は見ているけど、
見ていませんでした。


教習所内だから、誰もはねないけど、
一般道でやったら、追突間違いなしです。

でも、4つのルールだけなので、
何度も練習していると、自然にできるようになり、
前にも注意を払いながら、安全確認ができます。



ところが、このルーシーサイカクが、
40個あれば、どうなるでしょうか?

しかも、半年に一つ、二つ追加さられるとしたら。


私たちは機械ではない


動作はしているけど、見てるようで見てない状態です。
例えるなら、教習所で「ルーシーサイカク」を習い始めた頃のように、
「横を見ているけど、何も目に入っていない」

そんな状態で、パイロットは様々な作業をさせられます。

そして、少しでも違反したら、様々な罰則が与えられ
フライトを下ろされて、訓練という名の「調教」をさせられているようなものです。

調教してもらえるなら、良いものの
空から引退させられる人もいます。

最大の問題は、「構造」です



安全のために手順や操作を決める人も、
それをマニュアルにする言語化する人も、
それを実施する人も、
皆「安全を実現したい」と思っています。


ただ、すべての前提は

「正しい行動をすれば、正しい答えが出る」
「間違いなく行動すれば、安全が確保される」
というものです。


ところが、この前提、システムには問題があります。
それは、「人間が関わる」という視点が抜けていることです。


人は機械ではありません。
同じことを何度も正確に行わせると、混乱をします。

なぜなら、人の脳、身体は「フィードバックを通じた学習」という
仕組みを持つため同じことを繰り返すと、「新しい何かを創造」してしまいます。

それは、安全システムにおいては不純物であり、
「エラー」です。

具体例を示しましょう。

ピザって10回言ってみて
こんな遊びをしたましたよね?
「ピザって10回言ってみて」と言われて、繰り返した後、


「ここは?」と言って、肘をさしたら、「膝!」って答えてしまいます。


たわいもない話ですが、

「ピザ」を素早く40回繰り返し見ると・・・
(今、やってみてください)


だんだん、頭が混乱してきたり
「ザピ、ザピ、・・・雑費?」
「あ、経費の精算しなきゃ・・・」
なんて、違う発想が浮かんでしまいます。



これは、私たちの脳が、繰り返しインプットされる情報から
「何かを生み出そう」とする自然な働きが原因です。


何か新しいものを生み出したら、
安全システムにおいては、「無駄」どころか邪魔者です。


今の安全システムは、
「正しい前提は、未来永劫正しい」
「ルールを守れり続ければ、安全を実現できる」

という傾向が非常に強いです。


事故の本質は「予想外」



そもそも、事故とは何でしょうか?
起こった時に言われることは「まさか、そんなことが・・・」です。



つまり、予想外、予期せぬことが起こった時に
事故が起こります。


今の航空機は、「落とそうと思わないと、落ちない」ぐらい
安全にできています。


一昔前なら、思いっきり操縦桿を引っ張れば、急上昇し、
横にいっぱい傾ければ、ひっくり返ります。
今の飛行機は、そんなことは起こりません。


「安全に運転しなくても、安全に飛ぶように」設計されています。


こんな状況でパイロットに求められるのは、
「未知の状況」「予想外の出来事」に注意を向け察知し、
臨機応変(過去の事例から、素早く対処したり)に対応することです。


自動化 x マニュアル化で、想像力が失われている



未知の状況、予想外の出来事に注意を払うとは、
「予期せぬことは何か?」と問いながら、意識的に運転することです。


マニュアル操作、チェックに翻弄されて、
意識が「今の状況を俯瞰する」状態から
目の前のささいな出来事に向いています。


この状態は、「歩きスマホ」みたいなものです。

パイロットなら、誰もが知っている「ゴリラが見えない」現状がありますよね?
次々導入される安全装置、マニュアルが、まさに「ゴリラ」を見えなくしています。



なぜ、目の前の出来事を見落とすのか?


例えば、787に導入されているヘッドアップディスプレーです。


NASAの科学者リチャード・ヘインズは、1970年後半から、
1980年代前半にパイロットと情報ディスプレー技術について、
画期的な研究を行いました。


この実験は、「目を向けていていながら、見えていない」状態を鮮やかに実証しました。
当時、一般的であったB727を使い、クルーも経験の豊かなパイロットで行われ、


パイロット達は、ヘッドアップディスプレーを
十分活用できるように訓練をされました。
その十分活用できるようになった彼らのランディング画面に
ヘインズは意外なものを用意しました。


通常は、雲の層をくぐり抜けて、滑走路が視野に入り、
安全を確認して、着陸するのですが、
その時は、目指す滑走路の上に、巨大な旅客機を侵入させていたのです。

何人かのパイロットは、その事にまったく気づきもしませんでした。



私たちは考えます。


ヘッドアップディスプレーを使えば、視野を前に向けることができ、
パイロットの注意は、地上で、飛行機が移動してくる場所に注がれていくはずだと。


ヘッドアップディスプレーを使い、いつもより前を見ている時間が長いにもかかわらず、
なぜ、目の前の出来事を見落とすのか?


答えは、

注意力の働きに関する私たちの間違った思い込みにあります。


滑走路にいる飛行機が目の前にハッキリと現れても、
パイロットの注意は飛行機の着陸作業に注がれ、
滑走路に何かがある可能性に向けられていません。
滑走路に障害物がないか意図して、点検しないかぎり

パイロットは予期せぬものに気づく可能性は少ないのです。



安全に安定して進入できるという点に意識が向いてしまっていることで、
ゴリラ(まさか、こんなことはないだろうという現象)が
見えなくなっています。


とはいえ、現状をいきなり変えるのは難しい


これから、専門家、パイロット、マネジメントも含め議論していく必要があります。
しかし、それで解決できるまでには、まだまだ時間がかかります。


毎日、空の安全を直接扱うパイロットの私たちは、
「今のルール中で、最大限のことを行い、システム自体の変更」を
働きかけていかなくてはなりません。


私たちパイロットが、いますぐできることは2つあります。


人間の学習や、認知の仕組みについて学ぶ
それを可能な限り、現場で生かす


この2つです。


ヒントは、教習所にあります


初めて車を運転した時のことを覚えていますか?


・アクセル、アクセル量、クラッチ、半クラ、ハンドル
・一度に、いくつも操作するのに大混乱
・そうこうしていると、あっという間に壁が迫ってきて
・カーブ、ハンドルの切る量も不明
・なんとかやりきる


そうこうしていると、ルー・シー・サイ・カクさせられる。
気づけば、そうさは自動で行うようになった。
しかもスムーズに。


さらに、公道に出た後、周りの状況を見るのに必死で
運転は、無意識レベルでやるしかない状態になり
さらに運転技術が上がる。


免許を取った後、運転が上手くなる秘訣は、
「危険予測」です。


危険を予測するということは、事前に「あの車が入ってきそう」と
考えることで、避ける準備をしたり、減速をします。
その結果、急発進、急ブレーキ、急ハンドルがなくなって
スムーズな運転になります。


これは「危険予測に意識を使って、無意識に操作を任せる」ということです。
しかも、これは「ちょっとした意識」の持ち方で、実現します。

伸びる訓練生と、伸びない訓練生の違い


車の運転と、飛行機の操縦も同じです。
様々な操作を同時に行うには、「無意識」に任せる以外にありません。


次々に、管制の意図や、他機と自分の機体の位置関係が頭の中に
自然に入っていて、チームコーディネーションがスムースに行えて、
すべてに余裕がある運航の時は
あまり、難しく考えていませんよね。


余裕があると、客席の状況や、着陸後のことまで、
イメージできてますよね。


そのためには、「無意識に操作を任せる」、「一つ上の視点」で
状況を把握することに意識を使うことです。


このことから、伸びない訓練生は、ずっと「操作に意識」を持っています。
すると、意識が処理できる情報処理量、スピード、正確性は低いため、
ぎこちない動きをしてしまいます。


一方、伸びる訓練生は、スムーズな飛行、着陸、旋回を
「イメージ」しています。


意識をイメージに使うことで、それを実現するように「無意識」が働きます。
専門的には、意識によって無意識(学習機構)にフィードバックがもたらされます。


私たちの学習の仕方や、意識のメカニズムを知ることで
もっと楽しく、もっと安全に空を飛べる



同様に「いつでも揺れる可能性がある」
「いつでもエンジンが止まる可能性がある」
「簡単に間違うことができる」
という意識で操縦することで、



操作パネルによる「歩きスマホ」状態から、顔を上げ前を向くことができます。
予想外のことを探そうと意識すると、


操縦は無意識の担当になり、スムーズになります。

このような「意識の使い方」を学ぶことで、もっと操縦の技術を上げ
安全性を高めていくことができます。


さらに、訓練の方法も変えていくことで、「この意識の使い方」を
学びやすくすることができます。


例えば、ブリーフィングの時でも、単に「ミスを指摘し、調教する」のではなく
学習の機会に変えることです。


人は動物ではありません。調教のようなやり方では
ストレスを抱えるし、「不測の事態の応用力」は身につきません。


なぜなら、「調教」とは、「怒られるから、やる」なので
主体性がありません。
調教がないことに対しては、何かアクションをすることはありません。


これって、よくあるパターンじゃないですか?

「習ってない(調教されてない)から、できない」
と言う状態を引き起こしてしまいます。

この問題を解決するのが、「良かった点」「改善点」「次やるなら」「予期せぬこと」で
振り返るブリーフィングです。このブリーフィングが効果を発揮する理由は、
最新の学習理論で説明が可能です。


この学習理論は、「アクティブラーニング」の実現手段として注目されています。


(私は、このチーム学習理論を研究するチームと緊密に連絡を取りながら、
パイロットが学ぶべき様々なコンテンツを構築、提供していきます)


チーム一丸で成長する


この最新の学習理論は、「チームで課題にチャレンジして学ぶ」ことも、奨励しています。


チームで課題に取り組むということは、「学習効果が高いだけ」ではなく、
人として「お互いの違いを認め合い」「立場の違いを理解しあい」「協力し、学習する組織」
を作る協力な手段になります。



私は、このチーム学習、最新の学習理論を用いて、
空の安全性だけでなく、パイロットの働きがい、
上司部下の教育の活性化を行っています。



もし、あなたが「もっと空を楽しく、安全な場所にしたい」と願うなら、
私と一緒に、この問題について考え、
今やれることを取り入れ、一歩ずつ改善していきませんか?


私たちパイロットは、現場にいるからこそ、
何かを変えるチャンスを持っています。


確かに、大変かもしれませんが、大きな機会とも取れます。
あなたの参加をお待ちしております。
一緒に「空を楽しく」を実現していきましょう。



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