笑顔とありがとう
私は30年間、日本航空(JAL)でパイロットとして、その後機長として働いていました。リーダーシップをテーマにした本がたくさんありますが、私が皆様にお伝えしたいのは、実際の現場で学んだ、人々と共に成長する新たなリーダーシップのあり方です。
私の理解では、強いカリスマを持つリーダーがどんどん引っ張っていくスタイルは、現代の組織には不向きであると思います。なぜなら、リーダーが強く引っ張ると、チームメンバーは自分自身の考えを持つことが少なくなり、盲目的に従うようになってしまうからです。これは結果として、チーム全体としてのパフォーマンスが上がらないばかりか、権威勾配が高くなると、インシデントの発生確率も上がるとされています。
私が特に重要だと考えているのは「フォロワーシップ」です。それはリーダーが部下の意見を尊重し、それぞれの能力を認めてまとめ上げる力です。そのためには、メンバーが自分の考えを積極的に言えるような環境作りが重要となります。その中には、声のトーン、言葉遣い、挨拶、表情など、様々なコミュニケーション能力が必要となってきます。
そして、特に大切なのが「笑顔」と「ありがとう」という言葉です。これから私の現役時代のエピソードを交えながら、新たなリーダーシップの視点をお伝えします。
第一話のテーマは「笑顔の大切さ」です。
私たちが遭遇したあるトラブルの日、私は深呼吸をして、笑顔で「大丈夫、一緒に解決しよう」と声をかけました。その笑顔と一言が乗務員たちの緊張をほぐし、全員でトラブルを解決することができました。これは、笑顔がもたらすフラットな関係性と、それが引き出すチームの力によるものでした。
リーダーとしての笑顔は、ただの表情以上の意味を持っています。それは、安心感を提供する、信頼関係を築く、そして何よりもチーム全体の士気を高めるためのものでした。
リーダーシップは常に威圧的なものである必要はありません。それどころか、笑顔という簡単な行為を通じて、リーダーはチームに安心感を提供し、コミュニケーションを促進し、より良い結果を引き出すことができます。また、「ありがとう」の一言は、人々が努力を認められていると感じ、さらなる努力と成長を促す強力なエネルギーとなります。
これからも私の現役時代のエピソードを通じて、新たなリーダーシップの視点をお伝えします。次回もお楽しみに。