優先順位を決めて、一つ一つ確実に
今考えると、東亜国内航空時代、日本エアシステムの時代は厳しい空港が多かった。
世界的にもこんな条件で、JET機を運航させている空港が多い国も少ないのではないでしょうか?
調べた訳ではないので、正確な事は解りませんが。
厳しい空港での運航が多いせいでしょうか、どこかしらJASのパイロットには、お客さまの安全は絶対に俺が守る。という誇りというか、自負というかそんなものが漂っていました。
今ではほとんどの空港が、2000m以上に整備されましたが、
私がDC9の運航に携わった当時は1800mの空港が多く、パイロットの腕を求められる場面が多々ありました。
今でこそ、北九州空港は海上に作られましたが、当時は山と山との間にあり、陸地側から着陸する場合は、最終進入コースには送電線が横切っていました。
少しでも最少進入コースの高度が低くなったり、風の計算を誤って旋回半径が膨らんだら直ちに着陸をやり直さなければならなくなる様な空港でした。
奄美空港の冬場の西風、徳之島の東風、共に横風で山越えのとんでもない風が吹いています。
冬場の青森空港や旭川空港は、真っ白になってセンターラインライトも見えなくなる事もあります。
今ではこれらの空港の滑走路も長くなり、余裕ができて来ました。
以前の短い滑走路の空港はたいてい、一方向にしか計器で滑走路に誘導してもらえる機器が整備されていません。
風の状況によって反対側へ回り込んでの着陸を、気象条件の厳しいときほど実施しなければならなくなります。
地上からの高度で、だいたい150mで滑走路の横を飛行して180度旋回して、逆の滑走路に着陸しなければなりません。
進入中に上空の風の状況を把握して、反対の滑走路に着陸するための経路に乗るために、飛行機を向ける方向(1度単位)や旋回を開始する時期や飛行する秒数を計画しておかなければなりません。
一時的に滑走路が見えなくなるので、その計算を正しくしているのかが、安全に着陸できるかどうかの鍵になります。
だいたい最終進入から反対側の滑走路へ向かう為に、旋回を開始してから3分程の間に、
最終的な風の判断をして、自分の位置を把握し、反対側の滑走路へ旋回するバンク角を計算します。
その計算を信じて機体をコントロールして、滑走路に正対させ、進入角度を正しくセットし、エンジンの出力を調整して、着陸点へ0.5度の範囲で進入角度を維持して、航空機をコントロールし、着陸点へ持って行かなくてはなりません。
このとき、その一つの要素でもミスると着陸をやり直さなくてはならなくなります。
傍目から見ると短い時間に全て同時進行でやっているように見えますが、
全ての事に優先順位を考えて、操作する順序を、少しずつ,ずらせて、一つ一つを確実にこなして行きます。
そうする事で、次の操作に移る時間を生み出す事ができるのです。
そのような時は、身体のすべての器官の感覚を研ぎすませて、どんな些細な事でも感知できるようになっています。
目の端に移る景色、身体に感じる重力の変化、変化する音、その変化に身体が自然に対応して航空機が反応してくれます。
非常に短い時間で対処しなければ行けない場合は、優先順位を考え、操作時間をずらし、確実に操作を完了させる。
その事で、余裕が生まれ、結果的に確実に速く行動する事ができます。