いいカッコを見せようと思って
出雲空港を出発する頃、帰りの便での挽回を心に誓っていました。
出雲から東京への便は、水平飛行の時間が短く、サービスの時間も限られるため、安定した高度の選定が必要です。もちろん、燃料効率や定時運航も考慮しなければなりません。
自分としてはしっかりと根拠を持った高度を選定していたつもりでした。しかし、後で考えると、文句をつけられない無難な高度を選んでいたのかもしれません。
上昇中、上空には嫌な雰囲気の薄い雲が広がっていました。通常なら、すぐに高度を下げるのですが、私は自らの選定した高度に固執してしまい、その高度まで上昇してしまいました。
案の定、機体は揺れ始めました。とはいえ、この段階で高度を下げると、私の判断力が問われることになります。反応ばかりを気にし、判断が遅れがちになっていました。
揺れはさらに強まりました。下の高度に変更するため航空管制に連絡を試みたものの、安定している高度は他のトラフィックで混雑していました。
強い揺れの中、高度を下げることを願うばかりでした。結果的に、サービス時間が失われ、お客様や客室乗務員に負担をかけてしまいました。
羽田空港への進入は、西から大島上空を経由し、館山を飛び、木更津上空から計器進入方式で滑走路へと着陸します。
私はその進入を効率よく、スムースにやれることを見せつけたかったようです。心の大部分は隣に座っている査察操縦士の評価を気にしていました。
巡航からの降下飛行では、高度のエネルギーを速度に変換して飛行の効率を上げることが求められます。これには、スピードブレーキやスラットなどの抵抗を使用せずに、効率的に降下することが求められます。
この技術的な部分は、今の旅客機ではほとんど問題にならないほどの進化を遂げています。
通常の運航では、これほど細かい技術は必要ではありません。しかしその時、私はうまいところを見せたくなり、他機とのセパレーションや、全体的な視点が全くね毛落ちてしまっていました。
そうやって、どんどんドツボにハマっていってしまうのでした。