挫折からの新たな1歩
一生懸命、言うことを聞いてその通りにやれるようにしようとしていました。
言われることは、もっとも思えることではなく、自分の判断や操作とは大きく違っていました。自分が悪いと思い込んでいたので、言われた通りにできなければいけないのだと思い込んでいました。
そうやってやればやるほど、改善とは正反対に自分の操作や判断の能力が次第に衰えていくのを実感してきました。
もう、機長はできない。副操縦士に降格を申し出ようとまで思いました。
しかし、どう考えても言われていることが納得できない自分もいました。
あんなやつに潰されてたまるかという思いが、ふつふつと湧いてきました。
相手の言われたことや与えられたことをやっているだけでは、だめになると。どうせだめになるのだったら、やりたいようにやって終わろうと。
言われるまま、与えられることをやっても何も身に付かないことが分かりました。
相手にアドバイスをする時は、相手の身になって言っているようでも、それは自分が必要と思っていることで、相手が必要なことではないような気がします。
自分で考えて、自分のやりたいようにやる。
何を言われてもいうことを聞かない。
そう決心して、すべての操作、判断についてを洗いざらい見直す決心をしました。
なぜブリーフィングをするのか?
気象のチャートの解析はどの順序でやるのが良いのか?
チャートのそれぞれの意味は?
なぜこれを見なければいけないのか?
なぜこのスイッチを今、ONとするのか?
この操作の意味は?
判断の方向は?
タイミングは?
もう一度、隅から隅までのすべての操作を安全という面から見直していきました。
機長昇格では当たり前にやってきたことですが、もう一度、徹底的にやってみようと考えたのです。
それに関するすべてのマニュアル、資料を部屋中に広げっぱなしにして、いつでもすべての関連が調べられるようにしていました。
家族は困ったと思います。家中にマニュアルが広げてあったのですから。
航空法、耐空性審査要領、運航規程、運航規定、ルートマニュアル、管制方式基準、計器飛行方式基準,飛行規程、事故、インシデント報告、過去の会社発行資料、他社の資料や安全報告等
そして、宿泊のあるスケジュールでは、テーマを決めて資料を持って行きました。
その為、その頃の私のフライトバックは恐ろしく重たくなっていました。
すべてを部屋中に広げて、トイレ、風呂場にも持っていって、読みまくりました。訓練の時はいろいろ質問されるので、言葉で覚えておく必要がありましたが、実践で使えるようにする為には、実際の運航を想像して、頭の中に描いているイメージと知識を重なるようにしてイメージフライトをする必要があります。
実際の運航をイメージして、二時間近いイメージフライトを何度も繰り返しました。